稲田 裕司
Yuji Inada
2023.03.06
「事業承継対策は、まだまだ先の話」とお考えの経営者も大勢います。また、「事業承継対策をしなくては」と考えていても「具体的に何をすればいいかわからない」、「日々の業務が忙しく時間が取れない」などの理由で後回しにしている経営者もたくさんいます。この記事では、経営者が築き上げた会社を後継者へスムーズにバトンタッチできるように、事業承継計画の策定から推進まで詳しく解説します。
事業承継が思うように進まない、経営を息子に委ねたが、様々な問題が出ている等、事業承継に纏わる問題をよく耳にします。
事業承継をスムーズに進めるために必要な事は、以下の8つの項目を並行して進める必要があります。
Point 1 新たな時代に向けたビジョン、戦略の明確化
Point 2 財務的な安定の確保
Point 3 次世代に向けた組織適性化の検討
Point 4 新たな経営陣の育成
Point 5 新経営陣に対するステークホルダーの信頼
Point 6 新経営陣に対する従業員の信頼
Point 7 事業承継に纏わる法律関係知識の取得
Point 8 経営権の速やかな移譲
これらをしっかり固めていく為に、事業承継の準備を5年程度前から準備する必要があります。すべての項目を5年前から進めるのではなく、計画を策定して着実に進める事が大切です。
準備内容 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 |
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新たな時代に向けたビジョン、戦略の明確化 | ■ | ■ | ■ | ||
財務的な安定の確保 | ■ | ■ | ■ | ■ | |
次世代に向けた組織適性化の検討 | ■ | ■ | ■ | ||
新たな経営陣(次期社長+経営幹部)の育成 | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ |
新経営陣に対するステークホルダーの信頼 | ■ | ■ | |||
新経営陣に対する従業員の信頼 | ■ | ■ | ■ | ||
事業承継に纏わる法律関係知識の取得 | ■ | ■ | ■ | ■ | |
経営権の速やかな移譲 | ■ | ■ |
おわかりの通り、成長するには時間が必要であり、現場の知識を深め、従業員やお客様、関係するステークホルダーの状況をより深く把握しながら、経営に必要な知識を学ぶことが求められます。
子息等の血縁者が次期経営者になる場合、父親である現在の経営者が指導するのは、親子だけにかえって難しいものです。基本的な経営に関する知識の学習については第三者機関を使う方が良いでしょう。しかし、経営理念や現状の中長期経営計画、社内ルールや自社システムについては、次期経営者が現経営者や担当者から情報を得て自ら学ぶ必要があります。
現在の状況について理解した上で、次世代経営のあり方を検討する事になりますので、3年目までに学習し、その後2年をかけて新たな中長期計画案や新ルール、次世代システム導入、DX検討への取り組み等を進めます。
また、特に重要であると思われるのは、次世代の社長、そして社長を支える経営幹部全員のスキルアップに取り組む事です。経営者が引退するとその番頭さんだった経営幹部が同様に退任するケースが多く見られます。この場合、新しい社長と共に経営を担う新たな幹部が必要になります。そして経営陣が一枚岩となって、経営に取り組む為には、共通する知識や考え方を持つことが不可欠です。知識の共有によって生まれる共通語を持ち、お互いに補完関係を維持し、忖度の無い意見を交換できるようにしていくことで、経営がうまくまわるようになるからです。中小企業の場合、社長を助ける経営幹部は、営業部門と管理部門の責任者というケースが多いと思います。この場合、それぞれ所管する部門に係る専門知識を身に付ける他、経営手法についてもお互いに共感できる事が大切です。社長だけが分かるとか、経営幹部の一人だけがわかるとかではなく、3人が同様に理解できることで、よりレベルの高い経営を目指す事が出来るのです。
マインズコンサルティングでは、次世代経営幹部と次世代経営者が、一緒に経営をはじめとする様々な必要知識を学ぶ「次世代経営幹部養成講座」をスタートします。会社の業務を邪魔しない日時を設定し、全12回の講座とワークで経営に必要な様々な知識を学ぶことが出来ます。また、終了後は「次世代経営者倶楽部」として参加者同士の情報交換を促し、相談できるパートナーとしての関係を維持する取り組みを計画しています。ご興味のある方は是非お問い合わせください。